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「監査基準の改訂に関する意見書」の公表について

金融庁より、平成30年7月6日に「監査基準の改訂に関する意見書」が公表されました。

 


1.本意見書の概要

公認会計士(監査法人を含む。)による財務諸表の監査は、財務諸表の信頼性を担保するための制度であり、その規範となる監査基準は、財務諸表の作成規範である会計基準とともに、適正なディスクロージャーを確保するための資本市場の重要なインフラストラクチャーです。こうした観点から、金融庁の諮問機関である企業会計審議会では、監査をめぐる内外の動向を踏まえ、必要に応じて監査基準の改訂を行っています。

 

近年、財務諸表監査の信頼性を確保するための取組みの一つとして、財務諸表利用者に対する監査に関する情報提供を充実させる必要性が指摘されていました。

しかしながら、我が国を含め、国際的に採用されてきた従来の監査報告書は、記載文言を標準化して監査人の意見を簡潔明瞭に記載する形式となっており(短文式の監査報告書)、監査意見に至る監査のプロセスに関する情報が十分に提供されず、監査の内容が見えにくいとの指摘もなされてきました。

こうした中、主に世界的な金融危機を契機に、監査の信頼性を確保するための取組みの一つとして、監査意見を簡潔明瞭に記載する枠組みは基本的に維持しつつ、監査プロセスの透明性を向上させることを目的に、監査人が当年度の財務諸表の監査において特に重要であると判断した事項(以下「監査上の主要な検討事項」という。)を監査報告書に記載する監査基準の改訂が国際的に行われてきています。

 

同審議会では、こうした国際的な動向を踏まえつつ、我が国の監査プロセスの透明性を向上させる観点から、監査報告書において「監査上の主要な検討事項」の記載を求める監査基準の改訂について審議を行い、意見書として公表しました。

監査報告書における「監査上の主要な検討事項」の記載は、監査人が実施した監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高めることにその意義があり、下記の効果等が期待されます。

 

・財務諸表利用者に対して監査のプロセスに関する情報が、監査の品質を評価する新たな検討材料として提供されることで、監査の信頼性向上に資すること

・財務諸表利用者の監査や財務諸表に対する理解が深まるとともに、経営者との対話が促進されること

・監査人と監査役、監査役会、監査等委員会又は監査委員会の間のコミュニケーションや、監査人と経営者の間の議論を更に充実させることを通じ、コーポレート・ガバナンスの強化や、監査の過程で識別した様々なリスクに関する認識が共有されることによる効果的な監査の実施につながること

 

2.適用時期

改訂監査基準中、報告基準に関わるその他の改訂事項については、2020年3月決算に係る財務諸表の監査から、「監査上の主要な検討事項」については、2021年3月決算に係る財務諸表の監査から適用されます。

※2019年5月より元号の変更が予定されておりますが、記事公開時点で新元号が公表されていないため、便宜的に西暦表記としております。

 

なお、本稿は本意見書の概要を記述したものであり、詳細については下記をご参照ください。

金融庁

https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20180706.html