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経営研究調査会研究資料第12号「上場会社等における会計不正の動向(2025年版)」の紹介

日本公認会計士協会より、経営研究調査会研究資料第12号・上場会社等における会計不正の動向(2025年版)が公表されました。

 

経営研究調査会研究資料第12号・上場会社等における会計不正の動向(2025年版)は、2020年4月から2025年3月までの5年間にわたり、上場会社等において公表された会計不正の実態とその動向を体系的に分析・整理した調査報告書です。本資料は、監査や不正調査に携わる公認会計士のみならず、企業経営者、内部監査担当者、投資家など、広範なステークホルダーにとって有益な情報源となることを目的としています。

 

本資料では、会計不正を「粉飾決算」と「資産の流用」に大別し、各類型の発生件数、手口、業種別傾向、発覚経路、関与者の属性、発生場所などを詳細に分析しています。2025年3月期には、56社が会計不正を公表しており、うち2025年4月16日時点で42社が調査報告書を公表済みです。粉飾決算が全体の76.6%を占め、特に「売上の過大計上」や「循環取引」など収益関連の不正が顕著に見られましたことが紹介されています。

 

業種別では「サービス業」が最多で、卸売業、建設業、情報・通信業が続きます。市場別では、プライム市場における不正発覚率が他市場より高く、企業規模や開示義務の厳格さが影響していると考えられます。また、海外子会社における不正も増加傾向にあることが報告されているとのことです。

 

不正の発覚経路としては、「当局の調査」「内部統制」「内部通報」が上位を占めており、内部統制の強化と通報制度の整備が不正の早期発見に寄与していることが示唆されます。関与者の分析では、役員や管理職による共謀が多く、内部統制の限界が浮き彫りとなっています。

 

本資料は、会計不正の実態を定点観測的に把握することで、企業のガバナンス強化や再発防止策の構築に資する貴重な情報を提供しています。今後の企業経営において、透明性と信頼性の向上を図るための指針として、ぜひ活用されることを推奨します。

 

詳細は、日本公認会計士協会の公式ウェブサイトでご確認いただけます。

経営研究調査会研究資料第12号「上場会社等における会計不正の動向(2025年版)」の公表について | 日本公認会計士協会